昨年1月1日に導入された新たなJGAハンディキャップシステム(USGAハンディキャップシステム準拠、通称スロープシステム)が広がりを見せている。片山津ゴルフ倶楽部(石川県)ではすでに1000人を超える会員がハンディキャップインデックスを取得。

どのような取り組みを行ったのか、小杉善嗣ハンディキャップ委員長と北川勝義支配人に聞いた。

画像: スロープシステムの浸透ぶりを話す北川勝義支配人(左)と小杉善嗣ハンディキャップ委員長(右)。

スロープシステムの浸透ぶりを話す北川勝義支配人(左)と小杉善嗣ハンディキャップ委員長(右)。

-スロープシステム採用から1年余りですが、ハンディキャップ(以下HDCP)インデックスの取得状況はいかがでしょうか。

小杉 :4月末時点で1130人の会員が取得しています。従来の倶楽部HDCP取得者は約1200人でしたから、ほぼ同数です。ただ、倶楽部HDCPを持っている方で稼働しているのは700〜800人程度。HDCPインデックス取得者は実際に現在プレーされている方ですから、1130人というのは相当な数です。倶楽部HDCPからHDCPインデックスに完全に移行したといえるでしょう。

-会員の皆さんの反応はいかがですか。

北川 :昨年の10月に月例会参加者を対象にしたアンケートを実施しました。その結果、「HDCPインデックスの方が面白い」と答えた方が59%だったのに対して「倶楽部HDCPの方がいい」と答えた方は12%にすぎませんでした。残りは「どちらでも変わらない」という方。HDCPインデックスが受け入れられているというのが数字ではっきりと分かりました。また、昨年から月例会参加者が増加しています。これはHDCPインデックスが起爆剤になっていることに間違いありません。

-実際にどのくらい増えているのですか。

北川 :平均して1割5分ほど増えています。

小杉 :当初は果たして従来通りの申し込みがあるのかという心配をしていました。ところがHDCPインデックスを初めて採用した昨年3月の月例会でいきなり2割ほど増えたのには驚きました。

北川 :片山津では冬季は積雪などのために月例会は開催せず、3月がその年最初の月例会となります。みなさん冬の間はほとんどプレーをされていませんから本調子ではない方が多く、3月の月例会は出足が鈍く例年枠を埋めるのが大変でした。それが、あっという間に埋まったのです。

-なぜ参加者が増えたのでしょう。

北川 :従来の倶楽部HDCPよりもHDCPが増えたというのがきっかけになっているようです。「HDCPインデックスってよく分からないけど、こんなにもらえるのなら出てみよう」という反応をされる方が多かったですね。

-倶楽部HDCPから一気にHDCPインデックスに切り替えたわけですね?

北川 :会員の中からは倶楽部HDCPを残そうという意見は当然ありました。

小杉 :私も最初は当面はHDCPインデックスと倶楽部HDCPの「二刀流」でいかざるを得ないのではないか考えていました。

北川 :実際に「二刀流」でやっている倶楽部もあると聞いていました。ただ、「二刀流」ではHDCPインデックスへの理解を深めることが難しい。事務的な労力も大変ですし、やるからには中途半端はいけないと一本化を決断いたしました。

画像: 片山津GCクラブハウス内に掲示されている会員のHDCPインデックス表。4月末時点で1130人の会員がHDCPインデックスを取得している。

片山津GCクラブハウス内に掲示されている会員のHDCPインデックス表。4月末時点で1130人の会員がHDCPインデックスを取得している。

-HDCPインデックス採用決定までの経緯はどのようものでしたか。

小杉 :ハンディキャップ委員会では2〜3年前から議題に上っていました。HDCPインデックスは世界でこれだけ通用しているものです。それを片山津がいちはやく採用し、推進していくことの意味は大きいはずだと。私どもは北陸3県で最古の、そしてリーディング倶楽部としての誇りとプライドがあります。他倶楽部からの来場者から「スロープシステムを利用したい」と要望があった場合に、それに対応できないようでは名門とはいえません。我々が先頭を切ることで、普及にも貢献できるだろうという思いもありました。

北川 :ただ、現場を預かる私としては「小杉委員長、そうおっしゃいますけど手間もかかりますし大変なことですよ」という感じで、新ハンディキャップ導入についてはどちらかと言えば、抵抗勢力の立場でした。ところが、2013年に飛田秀一前理事長から「JGAが2014年からの導入を決めたのだから、その方向で進むのが自然なこと」という指示があったのです。トップの判断ですから、議論の余地などなく「導入ありき」の方針が固まったわけです。

小杉 :「やる、やらない」の議論をしていれば時間がかかったかもしれません。やると決まってからの支配人の動きは早かったですね。

北川 :やるとなったらまずは本丸のハンディキャップ委員会が推進役を担ってもらわなくてはなりません。その意味では小杉委員長の理解と後押しは本当にありがたかったです。委員や会員および従業員に説明するのは自分ですから、まず自分が理解し、自分の言葉で説明していかなければならない。JGAの資料(JGAハンディキャップ規定)を何度も読み返し、分からない部分はJGAに電話で問い合わせもしました。

小杉 :何度も説明会をやっていただきましたよね。先ほど申し上げたようにハンディキャップ委員会では以前からスロープシステム採用を考えてはいましたが、私を含めてそれほど知識があったわけではありませんでした。支配人が自分の言葉で分かりやすく説明してくれたおかげで、徐々にではありましたが委員の理解が深まっていきました。北川:どのように説明すれば理解してもらいやすいのだろうといろいろ考えました。HDCPインデックスは現在の力量を表すものですが、それだけの説明ではなかなか分かってもらえない。そこで「力量」を「体重」に置き換えて「体重計みたいなものですよ」と説明することにしました。若いころは50キロだった人が太って今は70キロになったとしましょう。倶楽部HDCPはかつての「50キロ」を表す性質がありますが、HDCPインデックスは今現在の体重を表すものです。しかも、毎日体重計に乗っていれば多少の変動はありますよね。HDCPインデックスはその変動も反映させたものですよと。

画像: 左:キャディーマスター室前の柱に掲示されている各コースのスロープレーティング。 右:「我々が先頭を切ることで普及にも貢献できる」と話す小杉ハンディキャップ委員長。

左:キャディーマスター室前の柱に掲示されている各コースのスロープレーティング。
右:「我々が先頭を切ることで普及にも貢献できる」と話す小杉ハンディキャップ委員長。

-そして2014年3月の月例会から採用。

北川 :スロープシステムに切り替えるにはまず月例会参加者にHDCPインデックスを取得していただかないといけません。その作業を事務局で行いました。月例会に出ている300人程度のスコアデータを前年末に私を含め数人で打ち込んでHDCPインデックスを算出したのです。事後承諾となりましたが、ハンディキャップ委員長名で「月例会の新しいHDCPを決めさせていただきました」というような文章を発送し、みなさんに了解をいただいた次第です。競技委員会からは反対意見がありましたが、何度も話し合って理解していただきました。

小杉 :少し強引でしたが実際にやってみることで理解を深めてもらいたいという意味合いもありました。

-300人ものデータを打ち込むことも含め、切り替えには相当な手間がかかったのではないでしょうか?

北川 :実際にやってみると、それほどの苦労じゃないです。スロープシステムへの切り替えにはお金も手間もかかると考えている方が多いように感じますが、そんなことはないとはっきり言えますよ。今では会員のみなさんへ順調に浸透していると感じます。プライベートのラウンドでもHDCP換算表を見て「きょうは白山コースを回るからお前とは2枚だな」という会話も聞こえてきます。

小杉 :片山津の場合は幸いなことに90ホールを有しているということがスロープシステムの理解に少なからず貢献していると思います。今年、日本女子オープンが開催される白山コースが他のコースより難しいことを会員は知っています。たとえば日本海コースならばHDCP差10でやれるプレーヤー同士が白山コースならば10では足りないということを実感しているはずです。スロープシステムはそれをうまく調整してくれるものだと納得してくれています。中でも私の感覚では女性の理解度、納得度が高いですね。

北川 :従来の倶楽部HDCPボードも廃止して、現在は掲示板となっています。毎月更新されるHDCPインデックスは何枚かに分けてプリントアウトしたものを掲示している形です。

小杉 :もう少し美しく、重みのあるものにしたいですね。

北川 :登録者数はもっと増えていくでしょうし、最終的にはHDCPインデックスボードのようなものをつくっていきたいですね。ただ、毎月HDCPが変動するわけですから、それに対応できるような様式を考えていく必要があります。

画像: -300人ものデータを打ち込むことも含め、切り替えには相当な手間がかかったのではないでしょうか?

-課題や要望はありますか。

北川 :スロープシステムが順調に普及していったとしても、やはり日本には日本のゴルフ文化というものがあり、その代表的な例が倶楽部HDCPだと思います。たとえ腕が落ちたとしても、ベストの時代のHDCPがそのプレーヤーの看板になるという文化です。HDCPインデックス証明書は最新のHDCPしか記入されていません。その点を寂しがるプレーヤーは少なからずいると思います。年に1回でもいいですから通常のものとは別に自己最高のHDCPも印字された証明書を発行していただけないかと考えています。カード型の少しかっちりしたものを。酒の席などで「オレはいい時はここまでいったんだよ」と話題が広がるかもしれないですしね。

小杉 :それは大事ですね。

北川 :有料でもいいと思います。たとえば、初めて10を切った時に記念に発行してもらいたいという人がいるかもしれない。それを見て、ほかのゴルファーが「自分もHDCPインデックスを取得したい」と考えるかもしれないですしね。スロープシステムをより広めていくために、何かゴルファーの心をくすぐるような工夫をJGAから仕掛けていってほしいと思います。

-貴重なご意見ありがとうございました。

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